会計士を捨てた人①高谷元悠さん

13467639_1022237134530365_1925315785_o

高谷元悠(Takatani Motohiro)さん

  • 大学3回生で公認会計士論文式試験合格
  • 大学在学中にベンチャー企業4社でアルバイト
  • 大学卒業後 大手監査法人で1年弱
  • ビジネスキャンプ優勝を機に株式会社BECを創業

 

高谷元悠さん(もっくん)は、桑理の大学時代の同級生。同じタイミングで会計士試験に合格しました。
大手監査法人を1年弱で辞め、バックオフィスで悩む時間をゼロにするクラウドサービス「Gozal(ゴザル)」を運営しています。

※このインタビューの趣旨は「会計士を捨てた人、諦めなかった人」インタビューを始めます。をご覧ください。

 

 

会計士を目指した理由

 

高谷:小学生の頃、テレビで「〇〇(企業)が売上高△兆円」ってニュースを見た。自分のお小遣いが月に500円ぐらい。「兆って何だ?」って、ギャップに衝撃を感じた。

桑理:ほぉほぉ。

高谷:それで、「そもそも会社って何?」と思って、会社っていう団体に興味を持った。会社っていう組織は父さんも母さんも行ってる身近な存在だけど、売上高は何兆円もあったりする。

桑理:ふむ。

高谷:自分が成長するにつれて、会社には経営者がいると知った。経営者が戦略を立てて、指示して、組織を動かす。世の中に色んな価値を提供して、何兆円っていう売上を生み出している。「経営者ってすげえな」って、その力、影響力に漠然と憧れた。それが中学校前半かな。

桑理:なるほどねー。

高谷:中学校2、3年の頃、OBが職業を説明してくれる機会があって、会計士の方が来てた。当時は会計士を知らなかったけど、「経営者にアドバイスして、不振に陥ってる会社を再生させてます。企業のお医者さんです」って言ってて。それまで、トップの経営者が会社を回してると思ってた。でも、経営者にアドバイスできるスペシャリスト集団がいた。

桑理:うんうん。

高谷:それで、会計士の能力を持った経営者が最強だと思った。数字で分析して、戦略を立てる。それが経営する力、その力が欲しい。中学の終わりには、会計士経由の経営者になると決めてた。高校も、会計士になるために商業高校に行きたいと思ったけど、親が「結論を急ぐな」と言って、普通の高校に進んだ。

桑理:ほぉ。

高谷:高校に入って、大学受験をして、大学入ってすぐに会計士の勉強をスタート。何とか3年生で受かった。人生の早い段階で会計士の存在を知った方だし、目指すと決めたのも早い方だと思う。

桑理:そうやね。メッチャ早い。

 

 

会計士を捨てた理由

 

高谷:前提として、自分は資格が欲しかったのではなく、能力が欲しかった。そういう意味では会計士を捨ててはいないし、逆に言えば、そもそも捨てる予定だった。

桑理:うんうん。

高谷:数字で分析して、経営者にアドバイスできる力が欲しくて会計士を目指したけど、論文式試験を受かった瞬間の自分は、「経営してみろ」って言われたら全然できない。難易度の高い試験を受かって、会計・会社法・税務、そういう知識はついたけど、同時に何もできない危機感を感じた。

桑理:ふむ。

高谷:たぶんそれは、僕に限らず、3年生合格の人は皆感じてたと思う。受かったと同時に、次の何かに挑戦していった。

桑理:確かに。

高谷:色んな経験をして、能力をつけたいと思って、ベンチャー企業にアルバイトで参加した。営業、プログラミング、経理、法務、、、いろんな機能をやらせてもらった。そこで痛感したのが、ビジネスをやっていく上で「何かの機能がすごいから会社が回る」はあり得ない。経営者がすごい、会計がすごいではなく、いろんな力がバランス良く重なって、1つの組織になっていく。

桑理:ふむふむ。

高谷:会社にはいろんな機能が必要。もっといろんな会社を見たいと思って、監査法人に入った。監査法人では、上場を目指すベンチャーも、1部上場企業も、現場で働く人と対話できるし、意思決定の根拠である議事録を全部見れる。どの職業よりも深く会社を知れる。

桑理:そうやなぁ。

高谷:特に上場準備支援は、未成熟の社内システムを整備していく苦労・葛藤とか、こうやって会社って大きくなっていくとかを現場で見れて、本当に良い。大学卒業後にすぐ起業するか、ベンチャーで修行するか悩んだけど、先輩会計士の話を聞いたりして、ずっといる予定では無いけど監査法人に行こうと思った。

桑理:なるほどねー。

高谷:結局、11カ月ぐらいで退職したけど。

桑理:うん。

高谷:理由はシンプルで、大きなチャンスがあったから。サイバーエージェントのビジネスキャンプ。社会人300名ぐらい応募して、そのうち60名が参加できる3カ月のイベント。3カ月間でビジネスプランを創って、参加者同士でぶつけ合って、決勝に残った人が藤田社長にプレゼンできる。

桑理:ほぉほぉ。

高谷:その時に作ったGozalの原案がたまたま優勝して。キャンプの打上げの時に、藤田社長が隣に来て「面白かった。本気でやるなら出資するよ。」と言ってくれたから、「やります」と即答。翌日に退職届を出して、起業準備をひたすら進めていった。

桑理:やっぱすごいな。

高谷:会計士を捨てた理由って言うと、まず大前提として自分で考えたビジネスでいつか起業したいと思ってた。それに加えて、監査法人に入ったばかりではあったけど、大きなチャンスが目の前に来たから「一気にやっちゃおうかな?」と。

桑理:そうやね。

高谷:ビジネスキャンプに出てたのも、本当の心理は早くやりたかったんかな?

桑理:そんな会計士、いないもんね。

高谷:過半数が、手に職をつけたい、安定したいと思って会計士を目指してる。起業したいとか思う人は少ないし、保守的な人の方が合っている職業でもあるしね。

桑理:うんうん。

高谷:でも、起業すると、いろんな会計士の方が話を聞かせて欲しいと言ってくれた。年上の方も、論文を受かったばかりの学生の方も。ベンチャーのCFOの方とか、税理士事務所の代表の方もいた。いろんな人と話をしたけど、やっぱり皆、本質的にはリスク取るタイプではないかなぁ。

桑理:リスクを取る人は、資格を目指さないんやろなぁ。

高谷:会計士の中にもたまにいるけど、本当に少ないと思う。だから逆に、リスクを取った人にはいろんなチャンスがある。良い意味でも、悪い意味でも、いろんな場所で注目されると思う。

 

 

会計士を捨てた今、どう思うか?

 

高谷:人生に合わせて、いろんな会計士の使い方がある。あんまり枠に囚われず、、、「会計士資格を持っているから、こうした方がいい」とかは無いと思う。

桑理:うんうん。

高谷:資格があるからでは無く、能力があるからどこかに行ける。監査法人出身でベンチャーキャピタリストになってる人も、「会計士だから出来る」では無く、「ベンチャーが好き、そこに必要な能力を伸ばそう」と自分でモチベートしたから。やっぱり、好きな方向に行った方が良い。能力も伸びて、快適な人生なる。

桑理:快適な人生かー。。。

高谷:自分も含め、会計士を目指して受験勉強してる時って、受かった後のことをそんなに考えてない。リアルに働いている会計士と話したこともない人ばかりだし、話したとしても監査法人とか税理士事務所の人。でも、実際のキャリアはもっと広い

桑理:うんうん。

高谷:勉強に多くの時間をかけたから、どうしても過去の自分の努力をムダにしたくなくて、会計士を活かして何かをしようと考える気持は解るけど。囚われない方が、いろんな道があってイイと思う。考えた上での監査法人なら、それは本当にステキだと思う。

桑理:ふむ。。。

高谷:会計士ありきで人生を決めるのはもったいない。人生がまずあって、今回の人生では会計士であるべきなのかを考える。限られた情報しか持っていない状態で、資格を取ってしまったことは仕方ない。過去の意思決定の善し悪しは別にして、会計士を経験すれば、知識もついて、人脈も広がる。そういったメリットを踏まえて、過去に囚われず、新たな決定をしていけばイイ。

桑理:なるほどね。

 

 

外から見て、監査法人をどう思う?

 

高谷:やっぱ、、、アツイ現場ですよね。

桑理:ほぉ。

高谷:監査法人で働いたことが無い人は、何をやっているかも解らないから色んなことを言うけど、現場はメッチャ大変だし、中の人はメッチャ頑張っていると思う。「現場はアツイですよ」と言っておきたい。やめた人間が言うのはアレやけど(笑)。

桑理:(笑)。

高谷:監査法人で働いたことの無い人が、「監査法人にいて何の意味がある?ベンチャーのCFOとか、大手企業の財務やった方がいい。」とか言うのは、同調できない。やっぱ人生ありきだから。本気で企業のコトを思って監査やってる人がいるし、そういう人はアツイなと思う。

桑理:意外な答えやな(笑)。

高谷:そうかな?(笑)。でも、、、監査法人にいる全ての人に考えて欲しいのは「自分がトップだったらどうするか?」ってこと。上が良くないからダメとかネガティブな人が多くて、そこはイケてない。

桑理:そうやなぁ。。。

高谷:監査法人って、クライアント企業の財務諸表上の問題点を指摘する仕事だし、場合によっては嫌がられる。従業員のモチベーションコントロールが非常に難しいビジネス。誰が経営しても難しいけど、その難しさを棚にあげて、上の人を批判してる人が多すぎる。「自分は経営出来るの?」って思う。

桑理:ふむ。。。

高谷:上から下まで、監査ビジネスの難しさを共有した上で、コトに当たっていかないといけない。それが出来ている監査法人とか、、、あるのかな?

桑理:無いやろねー。

高谷:情熱を持ってやっている人もいるけど、それを組織に伝染させていくのは難しい。

桑理:保守的な人が多いのも、関係あるんかな。

高谷:試験制度自体から、考えていく必要があるかもね。高校生ぐらいから、会計士の仕事をもっと知ってもらう。現場のリアルを伝えていく、地道な活動が必要。勘違いして入ってくる人を無くしていかないと。人生のロスになるし。

桑理:そうやなぁ。

高谷:現場のリアルを知った上で目指す人は、本物だと思う。本物が増えれば、全体のモチベーションを保ちやすくなると思う。

桑理:入口が大事ってことやなぁ。

高谷:あと、監査法人には色々な法規制があるけど、ビックデータを活用したり、新規事業とかやった方がいい。トーマツさんがFintechの情報を整理して発表してる資料とか、皆メッチャ見てたりするし。

桑理:そうやな。データ量がすごいし、全世界につながりあるしね。

高谷:それはホントにすごい。監査法人と同じく堅い組織である銀行もスタートアップと連携したりしてるし、堅い組織っていうのに囚われずにやっていかないと。良い人も入ってこないし、活力も出てこない。

桑理:さすが。経営者目線やな。

高谷:ホントに人が大事だし、退職者の多くが不満を抱えて辞めていく組織では、長期的に見てヤバいと思う。ルーティーン業務はどんどん自動化して、「監査に時間を取られているから、改革なんてできない」っていう言い訳を止めて、新しいことを積極的にやっていったり、従業員が新しいことに挑める環境を創ったり。

桑理:そうやな。。。参考にします。

高谷:副業とかやったらいいのにね。ベンチャーに簡易CFOとして派遣するとかニーズあるし、会計士も勉強になると思う。

桑理:うんうん。

高谷:法規制とかあって難しいけど、法規制も情熱があると変えられる。UberとかAirbnbとか、価値があれば世論が動いて、法律を変えていく。言い訳を止め、傍観を止め、情熱を持ってどうすれば組織メンバーの人生が豊かになるか?を本気で考えた方がイイ。

 

 

最後に・・・

 

桑理:最後に、宣伝でも何でもどうぞ(笑)。

高谷:宣伝は別にいらないけど、、、いろんな会計士・受験生の方とお話したい。僕とディスカッションしたい方がいれば、誰でもお会いさせて頂きたい。Facebookのプロフィール、貼っといてもらえたら。

高谷 元悠さんFacebookページはこちらをクリック

 

高谷:そこに連絡くれた人とは、誰でもお話しさせて頂きます

桑理:さすがやなー。何人連絡するかな?

高谷:100人読んだら、1人ぐらいは(笑)。

桑理:じゃぁ、少なくとも100人には、読んでもらえるようにします(笑)。

 

 

編集後記

 

冷静な口調で、アツイことを言う人です。
表情には出しませんが、情熱に溢れた人です。
いつ話しても、色んな刺激をくれます。

考えた上での監査法人なら、それは本当にステキだと思う

この言葉、刺さりました。

 

どうすれば人生が豊かになるか?を本気で考える人ですので、色んな相談に乗ってくれると思います。
ぜひぜひ、連絡してみてください。

高谷 元悠さんFacebookページはこちらのクリック

※2017年1月末時点で、当記事は約3,000アクセスとなりました。ありがとうございます。

 

関連記事