安田裕紀さん「一流の火山学者になる。宇宙飛行士になるために」

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安田裕紀(Yasuda Yuki)さん

神戸大学理学研究科
地球惑星科学専攻 博士課程2回生

(※桑理が、大学生1回生の時にバイトしていた塾の先輩。 バイトを辞めてからも、年に1回ぐらい会っている。)

 

桑理:安田さんの研究の話、聞きたいです。

安田:面白い記事にならんと思うけど(笑)。

桑理:面白いですよ。たぶん(笑)。何の研究をしてはるんですか?

安田火山の研究。北海道の大雪山っていう火山で、噴火の歴史を研究してる。

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桑理:噴火の歴史ですか。

安田:うん、昔にどんな噴火が起きたかを調べてる。

桑理:噴火に種類があるんですか?

安田:大きく分けて2種類あるな。

桑理:ほー。

安田:1つは静かな噴火で、溶岩が流れるだけ。もう1つが爆発的な噴火でマグマとか、岩片(がんぺん)が火口から勢い良く噴出する。ときには地面に落下したものが地を這うように流れて、火砕流を発生させる。

桑理:鹿児島の桜島の噴火は、どっちなんですか?

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安田:爆発的な方。でも、火砕流は発生しない。

桑理:どういうことですか?

安田:吹き上がったマグマ、岩片が火口の近くに積もるだけ。桜島で今起きてるのは「ブルカノ式噴火」って呼ばれる。

桑理:へー。いろんな名前があるんですね。

 

<・・・☆火山の話を聞き続ける☆・・・>

桑理:火山って、やっぱり日本が多いんですか?

安田:活火山は世界に約1,500あって、その7%が日本にある。多い方かな。

桑理:そうなんですねー。

安田:今起きてる、桜島とかの噴火は規模が小さい。去年の御嶽山(おんたけさん)の噴火も、地質学的に言うと小さい方。

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安田:昔はもっと大きい噴火があってんで。昔の噴火を調べようと思ったら、残された堆積物(たいせきぶつ)を調べて、当時の噴火の様子を探るしかないねんけどな。

桑理:なるほどー。。。安田さんの大雪山の研究は、何を見つけようとしてるんですか?

安田:火砕流噴火について研究してる。さっき簡単に紹介した火砕流っていうのは、マグマ、岩片、火山ガスが、周囲の空気を取り込みながら一団となって流れる現象やねんけど、噴火の後に残る堆積物は、火口に近いところと遠いところで見た目が全然違うねん。同じようなものが残りそうやけど。

桑理:ほーほー。

安田:火砕流に運ばれて、火口遠方に堆積したものは火砕流堆積物って呼ばれていて、それについてはよく研究されてる。でも、火砕流噴火の際、火口近傍に残される堆積物についてはまだよく分かってなくて、それを調べてる。

桑理:なるほどー。

安田:火口近傍の堆積物について研究するとなぜ良いか、って言うと、過去に起きた火砕流噴火火口を知ることに貢献できるねん。その堆積物は火口近傍にしか溜まらないから、逆にいうと、そいつの分布から当時の火口の位置を決定できる。だからすごい重要。

桑理:だから、安田さんは山の中に入っていくんですね。
(※研究のために、北海道の大雪山に何カ月単位で滞在されている。)

安田:そうそう!

桑理:火口から遠い所と近い所の堆積物で、何が違うんですか?

安田:堆積するときの周囲の環境が違うな。

桑理:環境?

安田:火口近傍は吹き上げられたマグマとか岩片が落下して、火砕流が形成されているところ。火口遠方は、火砕流が流れて堆積しているところ。この堆積環境の違いが、堆積物の見た目の違いに出てくるはず。その違いがどういうものか、違いを生み出す具体的なメカニズムは分かってなくて、それを明らかにしようとしてるねん。

桑理:まだ分からないことがあるんですねー。

安田:今度はメカニズムを説明できるようにしとくわ(笑)。

 

<・・・☆火山学の話☆・・・>

桑理:安田さんの研究は、たくさんの人がやってるんですか?

安田:火砕流の研究は火山学の花形で、1970年代から80年代にたくさんの人がやって、すごく知識が増えた。火砕流に関する重要な論文の多くは、その頃に発表されてるな。それ以降は研究者が減って、俺みたいにフィールドに出て研究する人も少なくなった。でも、未解決問題はまだまだ多いよ。

桑理:へー。まだまだ謎が多いんですねー。

安田:うん。全然分かってないよ。もしかしたら、火山学の参考書の一部は、事実と異なるかも。大昔に起きた噴火にいては実際に観察できひんし、推測で書いてるから怪しいのも多い。

桑理:難しい学問ですねー。

安田:昔の人が研究した結果を疑うのが、研究かな。

桑理:かっこいい!

安田:研究者は、皆そうやと思うで(笑)。

 

<・・・☆研究者になるきっかけ☆・・・>

桑理:なんで研究者になろうと思ったんですか?
(※ここでは、安田さんが宇宙飛行士になるために研究していること、桑理は気付いていない。)

安田:研究してて、面白かったからやな。

桑理:いつ思ったんですか?

安田:元々、研究して面白かったらドクター(博士課程)に行こう、面白くなかったら辞めようと思っていたけど、研究始めたら面白かった。

桑理:なぜドクターに行こうと?

安田:宇宙飛行士になりたい話は、したことあるっけ?

桑理:はい!

安田:まず宇宙飛行士の試験を受けるには、自然科学系の研究・設計・開発で3年以上の実務経験が必要やねん。ドクターまで行けば条件を満たせるから、ドクターに行こうと思ってた。

桑理:なるほど!

安田:研究に興味が出てきたのは、後からやな。

桑理:ドクターが終わったら、宇宙飛行士の試験を受けるんですか?

安田:試験はいつになるか分からんねん。10年に1回ぐらいやから。時期も決まってないし。

桑理:えー!

安田:研究するのは宇宙飛行士になるためやったけど、最近は研究者になりたい気持も出てきたかな。

桑理:全然知らなかったです。

安田:研究に興味無かったけど、始めたら楽しくなった(笑)。

 

<・・・☆火山学を選んだ理由☆・・・>

桑理:なぜ火山を研究しようと?

安田:大学3回生の時に、火山学の授業があって。全然興味無かったんやけど、単位の関係でどうしても取らないといけなくて(笑)。

桑理:ほー(笑)。

安田:先生が噴火のビデオを見せてくれて、溶岩が流れてる。その時に面白いと思った。「地球って生きてるんや」って。

桑理:なるほどー。火山学の中にも、色んな研究分野があるんですよね?

安田:たとえば火山地質学。これは、過去にどんな噴火が起きたかなどについて、残された堆積物を調べることで解明してやろうってもの。俺の専門もこれ。他には、火山岩石学っていうのもあって、火山の地下にあるマグマ溜まりの姿を、地表に噴出した岩石を調べて明らかしようとするもの。

桑理:いろいろあるんですねー。火山地質学に進まれたのは?

安田:1番は、野外に出るのが好きやから(笑)。

桑理:なるほど(笑)。

安田:あと、俺の指導教官も火山地質学が専門の人で。

桑理:最初の授業の先生ですか?

安田:そうそう。その先生の研究室に入って、やってるうちに面白くなってきた。

 

<・・・☆宇宙飛行士の話☆・・・>

桑理:宇宙飛行士には、いつからなりたいと?

安田:20歳ぐらいやな。フリーダムってアニメ知ってる?

桑理:いえ。。。

安田:カップヌードルのCMに出てたやつ。調べたら分かると思うわ!

桑理:あー!

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安田:そのアニメは、月に人が住んでる未来の話やねん。月では「地球は滅びた」って信じられてて、政府が月の人々の暮らしを管理してる。

桑理:ほーほー。

安田:主人公は月で育った中学生やねんけど、ある日、月面で小さいロケットを見つけるねん。中にメッチャかわいい女の子の写真が入ってて、一目惚れする。でも、どんなに探しても月にはいない。

桑理:ふむふむ。

安田:で、物知りなおじいちゃんに写真を見せると「背景に写っているのは地球だ」って言って。それを聞いた主人公が、滅びたはずの地球にその子を探しに行くねん。政府の追手から逃げながら。めっちゃ青春で情熱的なストーリーやねんけど、それを見て、俺は逆に月に行きたいと思った(笑)。

桑理:おもしろいですねー(笑)。20歳ってことは、理系を選んだのはその前ですよね?

安田:うん。理系を選んだのは、理科とか好きやったから。大学の学部を選んだのは「地球惑星科学科」って名前が凄くかっこ良かったから(笑)。

桑理:なるほど(笑)。それで、宇宙飛行士になりたいと思ったのが20歳ぐらいと。

安田:そう。俺のこんな話、誰か興味あるの?

桑理:メッチャいい話じゃないですか!

<・・・☆・☆・☆・・・>

桑理:宇宙飛行士になるのって、メッチャ難しいんですよね。

安田:10年に1回くらいの頻度で試験があって、前回が1,000人中3人合格やな。

桑理:ほー。。。試験は世界で?

安田:日本やで!JAXA(宇宙航空研究開発機構)の試験を受けるねん。アメリカでいうNASA(アメリカ航空宇宙局)。宇宙飛行士は自分の国でしかなれへんねん。

桑理:日本で10年に3人かー。それって増えないんですか?

安田:増えると思うで!

桑理:宇宙旅行も、50億払えば行けるみたいですしね(笑)。

安田:アメリカの歌手やんな?延期したらしいけど。ISS(国際宇宙ステーション)にも滞在も出来るらしいわ!

桑理:50億の一部は、誰かの儲けになるんですかね?(笑)。

安田:さぁ?ホンマにそんなかかるんかな?(笑)

 

<・・・☆まとめ☆・・・>

桑理:最後に、、、今後の目標を教えてもらえますか?

安田:そうやな。。。まずは、一流の火山学者になる。それが第一やわ。その上で、専門性を活かして宇宙飛行士になる

桑理:ほー!

安田:今までの日本人宇宙飛行士に、地質学を専攻してた人はいないねん。将来的に「有人で月に」って言ってるから、地質学をやってるのは有利やと思う。

桑理:素人でも、そんな気がします。

安田:一流にならんと、宇宙飛行士に選ばれへんし。

桑理:いいですねー。素晴らしい!

安田:大きい夢語っちゃってるな(笑)。

桑理:あと、読んでる人へのメッセージもいいですか?

安田:有名人がよく言ってるやんなー(笑)

桑理:未来の有名人ですから(笑)。

安田:まぁ、、、それっぽいことを言うと、「人生1回しかない。自分のしたいことをする」。それだけやな。

桑理:かっこいい!

安田:恥ずかしいな(笑)。

 

【編集後記】

この本を読んで、「僕も研究者のインタビューをしよう」と思った。パッと思い付いたのが安田さん(他に頼める人がいなかった。笑)。
僕のインタビューを全部読んでくれてて、「俺に来た!w」と思ってくれたらしい。

言い方は悪いけど、安田さんは「大当たり」だ。僕の周りに、こんなに具体的な夢と、夢を実現する手段を語る人はいない。

でも、ガラケーでメールのレスポンスは遅い。すぐ道に迷う。魅力的な人だ(笑)。

安田さんの話を聞くと、自分の夢を考えます。安田さんみたいに具体的じゃなくても、夢に近づいている人生、送れたらいいですね。

 

 

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