未来の会計監査は、かなり面白い

日本公認会計士協会から、IT委員会研究報告「ITを利用した監査の展望~未来の監査へのアプローチ~」(公開草案)が公表されました。

興味深かった部分を抜粋。

分析的実証手続においても、一昔前までは存在しなかった、又は電子データとしての利用が考えられてこなかった新しい情報源を独立変数として分析的実証 手続に利用することや、デジタルフォレンジックの分野で利用されている手法を 応用してサンプル対象を特定することなどが考えられる。
新たに利用可能な情報の例としては、被監査会社の社内情報では、電子メール、通常は監査で閲覧しな いような小さな会議の議事録内部通報ホットラインの情報などがある。
例えば、ある取引先名と高監査リスクを表すキーワード(架空、循環取引、費 用付替等)との組合せが電子メールやメッセンジャーソフトなどの社内コミュニ ケーションの中で多数発見されれば、従来より高い精度で高リスクの取引を抽出 できるかもしれない。
誰でも入手可能な社外情報としては、Twitter などの SNSインターネットの 掲示板検索エンジンのキーワード別検索回数などが考えられる。例えば、企業 の倒産の可能性について Twitterのつぶやきの分析により新たな事実を見いだし て貸倒引当金の十分性の検討に利用することも可能かもしれないし、インターネ ットの通信販売ビジネスであれば、検索エンジンでの商品の検索回数を独立変数として当該商品の売上高についての分析的実証手続を実施できるかもしれない。

(Ⅱ 近年の監査潮流の紹介 5.新しい監査手続 (2) 分析的実証手続の新手法)

 

今の監査は、多くを会社から入手する情報に頼っています。

しかし、全てが電子データとして蓄積される時代。

  • アクセス権さえあれば、何でも見れる。
  • インターネット上の情報も使い放題
  • ドローンを飛ばせば、監査人が現場に足を運ぶ必要も無い。

監査のやり方は変わっていくでしょう。
今まで10人でやっていたことが、監査人1人とデータ分析官1人で出来るかもしれません。

KPMGはこんなことをしているそう。

ある大手監査法人は、F1 のレーシングチームと提携して新しい監査手法に取り 組んでいる14。その F1 チームは従来からレースに勝つため車内に多くの計測装置を設置してビッグデータ分析を実施しており、将来予測を行う分析力に優れてお り、その知見を活かして企業の継続性やのれんの分析に利用するという。
監査の世界においては伝統的に過去情報に基づく手続が中心であり、将来を予測するた めの監査手法は相対的に弱いため、このように他業界のノウハウを活かして監査手続を改良する試みは興味深い。 

(Ⅱ 近年の監査潮流の紹介 5.新しい監査手続 (3) 大手監査法人での取組事例)

面白い。ワクワクします。
同時に、ITについていけない会計士は、用無しになるでしょう。

従来の監査の知識に加え、例えば次のよう な知識が必要になると考えられる。
・ データ抽出ツールの理解
・ データの可視化(Visualization)
・ データ解析のバックグラウンド(回帰、分散分析、データマイニング、SQL、 確率論)の理解
・ 統計学の知識
・ 技術力(ERP、プログラミング)
・ 監査データ分析
・ 非財務データの入手と活用
・ ビッグデータの活用手法
・ 人工知能(マシンラーニング)の活用
まずは、公認会計士が更なる統計的素養を身に付け、その上でその統計的な分析作業を実施して、その過程で多くの経験をする中でノウハウを確立していく必要が あろう。
同時に大学のカリキュラム、会計大学院のカリキュラム、CPEのカリキ ュラムなどの変更も必要になってこよう。
(Ⅲ 我が国での可能性を探る 5.統計的素養と経験の蓄積)

今までの監査は、(一応、数字には強い)文系の人間ばかりでした。

これからは、データを集めて分析する研究者のスキルが求められる。
今まで通り、企業の専門家である以上、法律にも強くなければならない。

現実、そんなスーパーマンはいません。

会計士は、各分野のスペシャリストに頼ることになります。
監査は、スペシャリスト集団でなければ出来ない仕事になるでしょう。

警察のように、スペシャリストが集まっているイメージ。

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警察のように、監査法人の社会的な責任は重くなっていきます。
それに伴い、必然的にIT業界の最先端をいくでしょう。

未来の会計監査は、かなり面白いと思います。

 

以上。最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m

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